日本ポリケムグループ独自の触媒技術により直鎖状の一次構造を有するエチレン系アイオノマーが誕生しました。
従来品と比較して結晶性が高く、高融点・高強度であることが大きな特徴です。
その優れた性能の一部とこの開発品アイオノマーが提供する新たな価値をご紹介します。
開発コンセプト
官能基を含む直鎖状ポリエチレンの誕生
カルボキシル基などの官能基を含有するポリエチレンは、古くからエチレンとアクリル酸の共重合(高圧ラジカル重合)により工業的に製造されています。このラジカル重合で製造されるエチレン系共重合体の一次構造は多分岐状となり,その性質としては結晶性が低く,低融点・低強度であることが一般的です。これに対して日本ポリケムグループは、遷移金属触媒を用いた重合によって直鎖状のエチレン系共重合体を得ることに成功しました。この新しい共重合体は高圧ラジカル重合品とは対照的に結晶性が高く、高融点・高強度であることが特徴です。
アイオノマーとは
アイオノマーは分子鎖の一部にイオン性官能基を導入することにより、イオン凝集体で疑似架橋点を形成するイオン性高分子の一種です。
アイオノマーは固体状態ではイオン凝集体が疑似架橋点として働くため、元の共重合体の性質をある程度保持しながら、力学性能の向上や新機能の発現を可能にします。その一方で、アイオノマーはネットワーク構造を持ちながらも熱可塑性を示すため、押出や射出といった様々な成形加工が可能である点も大きな特徴です。
日本ポリエチレンが開発した直鎖状エチレン系アイオノマーは、
直鎖構造由来の性質とアイオノマー特有の性質を併せ持った、様々な優れた材料特性を有します。
想定用途
直鎖状アイオノマーの優れた特性を活かして、様々な分野・用途への応用を検討しています。
現在、市場展開に向けて用途開発とマーケティングを開始し、ユーザーニーズに適合したグレード開発を進めています。
サンプルのご提供につきましてはご相談ください。
フィルム・シート
耐突き刺し性や低温ヒートシール性、光沢性を活かした食品包装用フィルム
耐傷付き性、透明性を活かした保護シート
繊維
溶融紡糸成形による軽量かつ強靭な繊維
射出成形品・ブロー成形品
射出成形や射出延伸ブロー成形により、透明性や機械物性に優れた容器・部材を成形可能
3Dマニュファクチャリング
(3Dプリンティング)
三次元造形性に優れ、造形品は程よい柔軟性と強度を併せ持つ
異種材料複合体
金属やガラスなどへの接着性を活かした異種材料複合体(鋼線被覆、合わせガラス中間膜等)
水性コーティング
耐摩耗性、耐傷付き性、耐水性・耐薬品性を活かした、建材へのコーティング剤
ヒートシール特性、耐水性を活かした、食品包装紙・情報記録紙等へのコーティング剤
航空・宇宙分野
耐摩耗性、耐傷付き性、軽量性などを活かした航空・宇宙分野の各種用途
スポーツ分野
耐摩耗性や反発弾性、耐水性(耐加水分解)を活かしたスポーツ分野の各種用途
エネルギー分野
透明性や接着性を活かした、太陽電池封止材等のエネルギー分野の各種用途